大阪市水道記念館と生物飼育の存続の要望書

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〈提出先〉
大阪市長
大阪市議会議長
大阪市議会議員の皆様
大阪市水道局
大阪市水道局・水道記念館

提出年月日:2012年7月18日

水都・大阪市の誇りである水道記念館と生物飼育の存続を要望します

公益社団法人 大阪自然環境保全協会

 水道記念館は、大阪市の水道や淡水魚等に関する普及・学習施設の拠点として、平成7年、大阪市水道通水100周年を記念して開設されました。
 水道記念館の展示の一部である淀川水系の淡水魚コーナーは、日本産淡水魚の保有種数日本一を誇り、その数は107種にも及んでいます(平成22年度実績:公益社団法人日本動物園水族館協会施設中最多)。まさに、水都・大阪が我が国のみならず、世界に誇るべき施設です。
 さらに、淡水魚の飼育展示だけではなく、19種の繁殖にも成功しています。なかでも天然記念物で絶滅危惧種でもあるイタセンパラは、既に淀川と富山平野、濃尾平野の各々一部にしか生息していませんが、全国の園・館で飼育されている個体数の約75パーセントに及ぶ601個体を水道記念館が飼育しています(平成23年1月1日現在)。この点からも日本の固有種の保存事業に大きく貢献しています。このイタセンパラに加え、アユモドキなど希少種の安定した飼育技術もあわせて確立・維持してきました。

 ご存知のように、琵琶湖・淀川水系では、生息地の破壊や悪化、外来種の流入などにより日本産淡水魚が大きく生息数を減らしてきており、従来は普通にみられた種でさえ数を減らしています。このような深刻な現況のなか、水道記念館が飼育している107種は、普通に見られた種が絶滅の危機に瀕している淀川水系のことを考えると、全て希少種と考えるべきです。
 当たり前に見られた種が消えてしまう悲しい絶滅を、私たちは幾度も経験してきました。なんとか蘇ったコウノトリやトキのように、今後も生息域外保全を重視し取り組んでいく必要があります。この種は珍しくない一般種だから残さない、こちらは希少種だから残すという考えは、ニホンオオカミやニホンカワウソなどの悲劇を繰り返すことになるでしょう。

 生物多様性の保全は今や地球規模の喫緊の課題となっています。日本では生物多様性基本法が施行され、我が国、そして主要な国際都市でもある大阪市、私たち市民にもその務めがあります。その大阪市はまさに今年1月、「生物多様性地域戦略のあり方」の環境審議会答申を受けました。
 先述しましたように、水道記念館は単に水道や淡水魚に関する展示ではなく、世界的にも特有な環境に生みだされてきた淀川水系固有の生物を保存し、大阪、そして日本、ひいては世界の生物多様性資源を今も育んでいる貴重な施設となっています。もちろん、今後策定される「大阪市生物多様性地域戦略」に位置づけるべき重要な施設です。

 最も大切なことは、ここで増えた魚たちがやがて安心して帰ることができる琵琶湖・淀川水系を、私たちが取り戻すことです。大阪市民など約1000名でつくる私たち公益社団法人大阪自然環境保全協会は、水道記念館とその機能を廃止することなく、一時閉鎖されている館で現在飼育中の全種を保存し、琵琶湖・淀川水系のジーンバンクをはじめ自然環境学習などの資源として活用し、飼育展示及び飼育技術の向上を継続していただくことを、強く要望します。

以上

ネイチャーおおさか 公益社団法人 大阪自然環境保全協会

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