第8回講座 自然のしくみ B  (2008.5.28.)
講座内容  樹木の見方、生態遷移、シカの植生への影響など
講  師   佐藤治雄(大阪府立大学名誉教授、大阪自然環境保全協会副会長)
場  所   奈良公園



奈良公園でよく見られる風景。手前はシカに食べられるので、短く矮小化したシバ、カタバミ、オオバコなどが生えている草原。 後方はシカが食べないアセビやナンキハゼが茂る。


公園内で生育するクスノキやシイ・カシなどはシカに食べられて地上約2m以下には葉がなく、これらの若木や芽吹いた木も見られない。


長く、鋭いトゲを持つサイカチですが、どこからどこまでが1枚の葉でしょうか?とクイズを出す佐藤先生(ちなみにサイカチの葉は1回羽状複葉だが、時々2回羽状になる葉もある)


内部が空洞になって地下茎から竹が生えて空洞内を突き抜けているムクロジ。形成層を中心とした幹の周辺部は死んでいないので木は活動している。


さらに空洞化が進んで幹の周囲の一部が喪失したクスノキの巨木。それでも樹上には葉をいっぱい茂らせている。


13年前に作られた約4m×5mの柵。柵内はその後、人の手やシカの侵入もなくクスノキ、サクラ、コブシ、イヌガシなど19種類の植物が生育し、サクセッションの一端が見られる。


奈良公園ではイチイガシの巨木が多く見られる。落ち葉になっても葉の裏に毛が密生していることから他のカシと見分けがつく。 人の影響が入る以前にはこの一帯はイチイガシを優占種とする照葉樹林であったと考えられている(サクセッションの進んだ状態)。


このあたりはナギのほぼ純林で非常に珍しい植生。最初、人によって植えられたものが、シカが食べないこととナギの枯葉や枯れ枝、剥落した樹皮などから他の植物の育成を阻害する化学物質を出すことなどが要因でこのようになったと考えられている。
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