第24回講座 「野生動物との共存」 (2008.10.29.)
講座内容奈良公園のシカを軸に人と野生動物とのかかわりを考える
講  師鳥居 春己 先生 奈良教育大学准教授
場  所奈良公園



最近、国内の各所でシカの食害による生態系への悪影響や農産物への 被害が増えており、奈良公園でもシカの影響が見られる。


「奈良公園のシカの頭数は現在約1200頭で、戦後の最少数時に比べると10倍以上に増えており、奈良公園の生態系はシカの影響を大きく受けている」と鳥居先生。


「奈良公園の景色はシカが作った」公園内の樹林には地上2m以下に葉が生えていない。シカが食べた。


ここではシカが食べないワラビ、アセビ、ナギ、ナンキンハゼが主に生育している。


短いシバの草地。シカに食べられたシバの種子の1/3はフンに混じって排泄される。その種子は発芽率が高いのでシバはシカと共生関係が成り立ち、優先種として生育している。鳥や風によって運ばれた種子は発芽してもシカに食べられてしまうので、樹木や背丈のある草本は成長できず、成長しているのはシカが食べないナンキンハゼ。


土から約2cm以下はシカは食べない。その背丈以下に適応して、花や種をつけて生育するイヌタデやツメクサ。


ナギとクスノキの葉を混ぜてシカに与えると、クスノキの葉だけを選別して食べる。


「これまで見てきたように、シカが増えすぎると植生が極めて単純になり、当然、これに連鎖する生物相も単純になってしまう。生態系を守るためにシカとどう付き合うか、対策が難しい」と鳥居先生。
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