第10回講座 自然のしくみ B  (2010.6.16.)
講座内容  樹木の見方、生態遷移、シカの植生への影響など
講  師   佐藤治雄(大阪府立大学名誉教授)
場  所   奈良公園



講座開始にあたり「サクセッションを中心に観察を進めていくこと。様々な樹木を見ること。質問があればみんなの前で質問して欲しい、一人の質問はみんなのヒントになる」と佐藤先生。


チドメグサ、スズメノカタビラ、オオバコ、カタバミ等、いずれも通常のものより小さい。原則として、植物にとってストレス(この場合はシカに食べられる)が強いほどサイズは小さくなる。


シカが食べないナンキンハゼは残り、成長していく。奈良公園にはこのようにして残ったものが多い。


地上約2m以下にあるクスノキ、シイ、カシなどの枝葉はシカに食べられてディアラインができあがり、林の向こうまで見通すことができる。地面には芝しか生えていない。


林の中にできた芝の生えた空間。シカが食べない樹木等(アセビなど)が周りを取り囲む。


桜をシカから守るために15年ほど前に作られた柵。鳥などが運んできた種子が芽生え、現在、16種の木本植物が繁茂する。一旦大きくなった樹木も、15年の間に枯れたり、新しく芽生えたりなどしながら比較的早いサイクルでサクセッションが起こっている。


奈良公園に多いイチイガシ。他のカシとの見分け方は、葉裏に毛があること。ルーペで観察する受講生。


「天然記念物春日神社境内竹柏樹林」の碑の前で。春日大社辺りにはナギが多い。シカも食べないこともあり、ナギの大木が純林状に残り、国の天然記念物の指定を受けている。


ムクロジ。幹の中心部が空洞になり、隣接する竹林から地下茎がのび、ムクロジの上部からタケが顔をのぞかせる。


台風等で、樹木が倒れたりすると、空間(ギャップ)ができ、日光が地表まで届く。新しい芽生えがあり、植物の入れ替わりが起こる。森林が維持されるメカ ニズムとして重要。林内では、このようなギャップがモザイク状に現れる。


クスノキの中心部分がなくなり、形成層を中心とした幹の外側に近い部分で生き続けるクスノキ。


観察会で山野を歩く時は、自分のいる場所を知ることが重要。地図で位置確認をする受講生。
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