タンポポ2005_2004予備調査実施要領 表紙

タンポポ調査・近畿2005予備調査実施要項(第1版)
(2004年4月1日〜5月31日実施)



3.新たに生じた問題 ― 雑種タンポポの発見とその増加

 このような環境を知るための調査にタンポポが使われてきたのは、総苞外片が上向きなら在来種、下向きなら外来種であると簡単に種類が判断でき、誰でも調査に参加できるということがもっとも大きな理由でした。
 ところが1990年代になって、この在来種と外来種との間に雑種ができているということがわかりました。そして大都市周辺では、外来種が在来種との間で雑種を作りながら広がっている可能性があるといわれています。

 この雑種タンポポの多くは総苞外片が下向きか横向きで、見ただけでは外来種と区別ができません (これを外来種型雑種という)。今のところ、雑種であることを確実に調べるには、タンパク質やDNAなどの化学成分を分析して比較するしかありません。
 ということで、今までと同じ方法でタンポポ調査を行なえば、総苞外片が反り返っているものには、純粋の外来種と雑種のタンポポが含まれてしまいます。その上、最近になって雑種にも様々なタイプがあることが発見され、中にはまだ少数ですが、総苞外片が上向きで在来種と間違う可能性のある雑種 (在来種型雑種) まで見つかっています。

 そこで、今回の予備調査では、今までのタンポポ調査の方法を発展させて、従来と同様に総苞外片が上向きか下向きかだけではなく、総苞や痩果の形態を詳しく観察して、純粋な外来種と雑種とをできるだけ識別することを試みます。またそれとともに、総苞外片が上向きの在来種型雑種を在来種と識別するために、花粉の観察を行います。これは2倍体である在来種の花粉は大きさがそろっている (写真左:上・下)のに対し、3倍体の外来種や多くの雑種の花粉は大きさがバラバラ (写真右:上・下)なので、花粉の観察で両者を区別できるからです。



 これらの観察を行うためにも、今回の調査では発見されたすべてのタンポポについて、頭花と痩果(綿毛のついたタネ)の標本を採取して送っていただき、統一した方法でタンポポの種類を確認することにしています。また、一部の標本については、タンパク質やDNAなどの分析も行って、頭花や花粉の形態などから雑種・外来種・在来種などの区別ができるかどうかを検討します。

 このように、2004年予備調査では、雑種タンポポの増加にともなって現在指摘されている問題を解決するために、どのような調査方法が有効であるかを検討し、来春近畿全域で行う本調査を科学的で正確なものにしたいと考えています。



実施要項・目次
タンポポ調査・近畿2005 実行委員会 これがタンポポだ!(似た種類との識別法)
1.はじめに―「タンポポ調査・近畿2005」に向けて タンポポの種類分け(在来種と外来種の見分け方)
2.「タンポポ調査・近畿2005」の目的 雑種タンポポについて
3.新たに生じた問題―雑種タンポポの発見とその増加 過去のタンポポ調査の結果例(1970年代の京阪神、堀田1977より)
4.タンポポ調査・近畿2005実行委員会 今後のスケジュール
5.2004年予備調査について トップページ