タンポポ調査・近畿2005 活動記録 No. 2



「タンポポ調査・近畿2005」立ち上げのための話し合い (第1回準備会) 会議結果報告

【日時】2003年3月1日(土)13:30〜16:40
【場所】(社)大阪自然環境保全協会 事務所
【参加者】 高須 英樹和歌山大学教育学部生物学教室
小川 潔 東京学芸大学教育学部地球環境科学研究室
池端 絹代 奈良自然観察会
布谷 知夫 滋賀県立琵琶湖博物館
酒井 和子 堺自然観察会
佐野 順子 三重自然誌の会
佐久間 大輔   大阪自然史博物館
鈴木 武 兵庫県立人と自然博物館
八木 剛 兵庫県立人と自然博物館
武田 義明 兵庫県生物学会
高畠 耕一郎   大阪自然環境保全協会
木村 進 大阪自然環境保全協会
佐藤 治雄 大阪自然環境保全協会
常俊 容子 大阪自然環境保全協会
米道 綱夫 大阪自然環境保全協会
【内容】*事前に提出した会議レジメに、討論内容を若干追加した(下記参照)。
 
    (1) 調査の目的
     近畿地方全域で調査を行なう目的は次の3点であるが、各府県によって力点の置き方は異なるだろう。

  • @ タンポポを生物指標として、近畿全域の自然環境の現状を把握する。大阪府はすでに外来種と雑種が分布を拡大しているが、まだ、在来種の多い地域も含めて調査することで、純粋な外来種と雑種タンポポの今後の分布拡大を知る基礎資料となる。
     *1975年〜1980年頃の調査結果がある地域では、その時の結果と比較することで、約30年間の自然環境の変化について知ることができる。

  • A 調査を行う過程で、調査に参加した人々に身近な自然に目を向けて再認識する機会を提供するとともに、自然環境の変化に関心を持つきっかけとなることを期待する。 *小中学校や高等学校における環境教育の一環として「タンポポ調査」を呼びかけることで、調査活動を広げるとともに、身近な地域の自然環境に興味を持つ児童生徒を育てる。

  • B タンポポという誰にでもとっつきやすい植物の分布を協同で調査することで、近畿地方の自然保全団体・博物館・自然愛好団体・植物研究者の間における交流を図るとともに、各地域での自然保護・環境保全の課題を共有することができる。
    (2) 調査方法

  • @調査対象地域:近畿地方全域(大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山・三重)

  • A調査組織と役割
  • 近畿全体の調査実行委員会府県別のセンター 各参加団体
    *近畿全体の共通の調査方法を検討するとともに、結果を集約する。 *各府県のサンプルを回収して同定し、分布地点を集計*調査地域毎、参加者をを募集して実際に調査活動を行う。
    独自に行なうことが無理な府県があれば、実行委員会で対応せざるを得ないか?

  • Bタンポポの種類の区別
     1) 形態的外来種(総ほう外片が離れる)・黄花の在来種(主にカンサイタンポポ)・シロバ ナタンポポの3種類に分類することを基本とする。
     2) 形態的外来種の大部分は在来種との雑種であるが、一部のサンプルについては雑種か否かの判別(アイソザイムかDNA解析)を行ないたい。簡易的に雑種の可能性を判断するためには、花粉の有無や形態・総ほう外片の状態などの観察やそう果の発芽習性のチェックなどの方法も利用できる。
     3) そう果があれば、外来種をアカミタンポポ群とセイヨウタンポポ群に区別できる。
     4) 黄花の在来種をカンサイタンポポをはじめ、近畿に分布する数種類に分類する。
      近畿全域の共通部分として、1)の区別をして、2)を併用する。府県によっては、3)・4)まで分類することも考えられる。
    小川氏より在来種、雑種、外来種の現状(関東)を説明が下記のようにあった。  
  • 80〜90年には在来種が半減し、外来種が増加したが、00年は変化が止まっているようだ。
  • 70年代に開発された多摩丘陵では在来種が80年代半減していたのが最近数%増加に転じ、外来種が減少している例もある。
    C調査方法の検討
  • 1) 基本としては全府県で、現地で形態(総ほう外片など)から種類を判定して、調査票に記入するとともに、標本(頭花・そう果)を採取して送付してもらって、確認する。また、雑種か否かの判定にも頭花の標本や、そう果を利用する。<専門的調査>
    *雑種か否かの解析(アイソザイムかDNA解析)を実施する場合は、どこへ依頼するか(琵琶湖博でも可能)⇒分析のための薬品などの消耗品や、分析を依頼するために人件費などの予算必要。
  • 2) 標本の送付なしでも、調査票で地点(郵便番号・住所)と種名を報告してもらう(そう果の添付は可能)だけの分布データや、地図へのプロットやメッシュ別の分布地点数の報告もデータとして集約する方式も併用する。<一般調査>
    D調査に向けての取り組み
  • 2003.1.20 保全協会理事と布谷(琵琶湖博)との打ち合わせ
    2003.3.1  調査立ち上げのための話し合い
    2003年春  雑種の判別に向けての予備的な調査(大阪府堺市・兵庫県三田市に可能性)
    2003.4.26 雑種タンポポに関する研究集会
    2003.5〜  近畿全域に広く呼びかけ、調査を呼びかける団体・組織をピックアップする。
    2004年  調査実行委員会を発足させて、参加団体・参加者を募集。予備的な調査を行う。
    2005年4〜5月 本調査の実施
    E予算と助成金の申請
  • 数百万円程度の助成金が必要。府県別やテーマ別に複数の助成金を申請する。
    F調査結果の集約・調査報告書の作成
  • 博物館の瀬戸内ネットや琵琶湖博で採用しているシステムが使える。(パソコン画面上で分布地点をクリックすると、メッシュ別にデータが集計できる)

<次回会合までの課題>−シンポジウムについて、2005年に向けての行動計画など−

    @ 各府県で調査に参加していただける団体・個人をピックアップし、次回会合への出席を呼びかける。
  • 兵庫県
    ・兵庫県立三田人と自然の博物館ではたんぽぽ調査は今年度実施予定。(鈴木)
    ・兵庫県生物学会はこれから提起する(武田)
    ・神戸市は2004年にタンポポ調査を計画していたが、2005年に回す可能性も出てきた。(武田)
  • 京都府
    ・森林インストラクター
    ・京エコロジーセンター
    ・京都環境市民
    ・水と緑の連絡会
      のいずかれに連絡をとる。
  • 奈良県
    ・NACS−J(奈良自然観察会) 
  • 和歌山県
    ・和歌山では南紀生物か?とりあえず連絡は高須氏中心で。
  • 三重県
    ・三重では調査できる基盤があるとはいえない。博物館が中心にはならない現状。
    ・三重自然史の会、三重生物(高校教師等のグループ)という会もある。(佐野)
    ・RDB作成の絡みで県がするかも知れない。
  • 大阪府: ・大阪自然環境保全協会が中心で、大阪市立自然史博物館がサポートに回る。
  • 滋賀県
    ・琵琶湖博物館が中心にはなるが、他の会とも実行委員会をつくる方向
  • 全般
    ・各府県の高校の研究会へ再度連絡をとり、関心のある教員を紹介してもらう。
    A 会の名称
  • この会の名称を「タンポポ調査・近畿2005」準備会 とする。
  • (社)大阪自然環境保全協会が当面、事務局的な世話をする。
  • 次回の会合:「タンポポ調査・近畿2005」第2回準備会 話し合い
       【日時】6月28日(土)午後1時30分〜4時00分、
       【場所】(社)大阪自然環境保全協会事務所(大阪梅田より徒歩10分: 案内地図 )
    B 「タンポポ調査の意義を問う」(仮称)研究集会シンポジウムへ研究者等の参加を招請する。
  • ⇒全国から雑種問題に詳しい研究者を招いて学習会(シンポジウム)を持つ
  • 森田竜義氏(新潟大)・小川潔氏(東京学芸大)・芹沢俊介氏(愛知教育大)の3人の出席は決定。
  • 今後、米山氏(朝日新聞)・伊東明氏(大阪市立大学)・堀田満氏(元鹿児島大)他にも依頼する。
  • 【日時】4月26日(土) 午後1時30分〜4時00分
  • 【場所】大阪市立自然史博物館(地下鉄御堂筋線「長居駅」下車徒歩5分:http://www.mus-nh.city.osaka.jp/
         
<参考資料>
    @ 前(1975年頃?)のデータがある地域
  • 大阪(保全協会)・兵庫(兵庫県自然保護協会)・ 奈良(奈良県高等学校生物教育研究会)はほぼ全域。
    京都市〜滋賀県南部(堀田満氏・京都大学学生、滋賀県⇒琵琶湖博)、
    和歌山県(北部:和歌山大自然保護の会⇒県立自然博、和歌山大高須氏)・三重県(高校生物教育研究会)、
    その後、環境庁の「緑の国勢調査」でも、タンポポが調査されている。
    以前に近畿地方で調査された事例や組織にあたって、それらの組織にも呼びかけていく。
    A 雑種問題について
  • 「総ほう外片が垂れ下がっているか、内片と明らかに離れている」形態的には明らかに外 来種とみなせるタンポポの80〜90%以上が、DNAレベルでも雑種であることが各地の調査で確認され、近畿地区の調査でも同様の状況であることが予想される。
    しかし、形態だけからは雑種か否かを完全に判別することは不可能である。
    最近の報告では、雑種タンポポの中に「総ほう外片が上向き」で形態的に在来種と見間違う可能性もある個体があることが指摘されている。大阪での2000年調査でも報告があったが、これらは頭花(小花数など)やそう果の形態を観察すると、在来種とは区別できる。ただし、標本がないと一般の調査者が同定することは難しい。

  連絡・問い合わせ先:
   タンポポ調査・近畿2005事務局(tampopo@nature.or.jp

530-0075 大阪市北区中崎西2-6-3 パステル1-201
(社)大阪自然環境保全協会内
Tel: 06-6374-3376 Fax: 06-6374-0608

担当:木村進・高畠耕一郎
Nature Osaka

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