都市と自然誌抜粋(トピック)No_440_201211


  「都市と自然」誌2012年11月号の内容を一部ご紹介します。

特 集

水道記念館・南港野鳥園が存廃の危機―大阪市に継続を強く要望―

大阪市は、生物多様性保全の拠点として、また、その普及啓発の場として重要な施設である大阪南港野鳥園、水道記念館を「市政改革」による「見直し」の対象にしています。保全協会は、他の環境諸団体と協同してこれらの施設の継続を強く要望しています。

淀川の『恵み』を学び、遊ぶ中心的施設

大阪市水道記念館

文・写真 綾 史郎(大阪工業大学教授・水道記念館と生物飼育を考えるネットワーク代表)

  大阪市水道記念館は都心である大阪(梅田)と新大阪の間の淀川河畔柴島浄水場内に、大阪市水道の通水100年を記念して1995年にできた入場無料の大阪市水道局の広報施設である。館内には大阪市水道の歴史や技術の展示および水道水源である琵琶湖淀川水系の水環境の保全を訴える流域模型があり、1998年には天然記念物アユモドキをはじめとする淀川水系の淡水魚の展示コーナーが追加開設された。2002年には淀川のシンボルフィッシュである天然記念物イタセンパラの展示・公開が始まり、100種類を超える淡水魚が飼育・展示され、城北ワンド群を最大の生息地としたが、淀川水系では野生絶滅したイタセンパラを見ることができる大阪市内唯一の場所であった(図参照)。

 入場者数は当初年間4万人程度であったが,淡水魚展示開始翌年の1999年度以降入館者は増え続け、2008年度には約5万人の小学生を含む10万人弱の入館者を記録した。現在では、旧配水ポンプ場建屋を利用した有形登録文化財である赤レンガと御影石の素敵な建物と淡水魚の小水族館という他都市の水道記念館にないユニークな展示で全国一の入場者を誇る。水道施設・事業の歴史と意義および水源である琵琶湖・淀川水系の恵と自然環境の大切さを学ぶという、大きな社会貢献をしている施設である。
 水道記念館の周辺には、淀川本川の城北ワンド群や新淀川の汽水域や柴島、十三の干潟群、旧淀川(大川)などの豊かで多様な自然がひろがり、また、淀川河川公園や淀川大堰、毛馬洗堰、毛馬配水機場などもあり、淀川の人と自然を学び、遊ぶ中心的施設の一つとなっていることも忘れてはならない。
 水道水源の全てを淀川に依存する267万大阪市民に淀川の恵みを教え,その恵みを次世代に継ぐべく,淀川の自然環境の重要性と保全について啓発することは淀川の恵みを享受する1700万給水人口の中でも最大である大阪市の義務と考えられるが、大阪市政の大改革の中で淡水魚展示が廃止されようとしている。視点を広げ、大阪市全体でこれを支えるとか,同様に淀川の恵みを享受する大阪府民886万人で支え,来館者を倍増させる考え方などもあると思われる。 

水道記念館存続運動~保全協会の動き~

文・写真 加賀 まゆみ (理事・水道記念館と生物飼育を考えるネットワーク)

  

 保全協会が、水道記念館の飼育生物の維持存続に向けて活動をしているのはなぜ?と思う会員の方も多いかと思う。きっかけは、今年5月末のこと。理事会に、ある会員が飛び込んできたことから始まった。彼は淀川の河川レンジャーをしている協会正会員で、「日本一の淡水魚水族館である水道記念館をぜひ存続させたい」という。だが、水道記念館は閉鎖にむけて4月から休館しており、時期既に遅しといった感が否めない。その日の理事会では彼から事情を聴くだけで終わった。
 だが淀川水系には外来種の侵出が激しく、これまでも危機感を抱いていた協会は、水道記念館の飼育生物がジーンバンクとしても環境学習施設としても非常に重要であると考え、7月18日大阪市長・大阪市議会議長・大阪市水道局他あてに要望書、「水都・大阪市の誇りである水道記念館と生物飼育の存続を要望します」を提出。
 同日、河川レンジャーグループがfacebookで、水道記念館と生物飼育の存続を考えるグループ「net淡水都」をオープン。8月3日には高田前会長も関わっている「淀川水系の淡水魚を次世代につなぐ会( 長田芳和代表)」より「大阪市水道記念館の淡水魚展示についての要望」が提出された。それで、協会もこの同じ思いを持つ団体らとネットワークをつくり、一緒に活動することを決めた。 

8月5日市会議員に相談。要望書ではなく、議会で意見質問のできる「陳情」をすべきとのアドバイス。その後各会派を回って根回しをし、9月4日陳情書提出。
 また並行して、8月27日よりネット署名を開始。
 陳情書提出後も、各会派議員への面談・メールでのお願いを繰り返したが、どの会派も私たちが協力して、明日の大阪の環境のために行動していることに、深い理解と共感をもって頂けたように思う。
 9月21日大阪市議会交通水道委員会にて、陳情内容についての議員質問がもたれた。傍聴させてもらったが、各会派、私たちが予想していた以上に熱心に水道記念館の生物飼育の必要性を主張し、水道局に存続を求めていったが、「水道事業の減収で予算が大幅に削減され、飼育の予算はない」という水道局の返答で、「継続審議」という結果に終わった。
 
 歴史と文化を感じさせるレンガ造りの建物は登録有形文化財。その中で、天然記念物のイタセンパラをはじめ、琵琶湖淀川水系の淡水魚類が生き生きと泳ぎ回っている。その淡水魚飼育種数は日本一を誇り、かつ私たちの生命の源・淀川と水道水の全てが理解できるすぐれた環境学習施設である。そのミスマッチな美しい空間と充実した展示は、水都大阪のたからものだ。
 今後、さらにネット署名を集め、再び要望書、陳情書を再提出予定。また、10月25日には、「水都のたからを考えるシンポジウム-淀川の生命をつなぐ-」を開催し、水道記念館飼育生物の重要性を世論に訴え続ける。

南港野鳥園の存在

文・写真 高田 直俊(大阪南港野鳥園を存続させる会代表)

 30年を迎えます。保全協会のパンフレットには、南港野鳥園の開設運動を担った市民が保全協会を設立した、とあります。水を含んだ海底の土で埋め立てられていた造成地が干潟状になり、そこに多くのシギ・チドリが集まっており、それを観察していた野鳥の会のメンバーが失われてゆく干潟の復元運動を始め、「南港の野鳥を守る会」を1964年に立ち上げました。71年には野鳥園の開設を公約のひとつに謳った中馬馨氏が市長に当選し、野鳥園の設置が決まりました。そして12年後の82年に野鳥園が開園しました。当時の環境問題は深刻なものでした。この過程で自然保護運動の重要性を認識した運動中枢を担った若いメンバーが保全協会を立ち上げたのです。守る会は84年5月に活動を閉じました。
 野鳥園は大阪市港湾局が管理運営していましたが、その後大阪市の外郭団体が関わり、2006年からは指定管理者制度に移行し、開園当時から関わって来たグループがNPO法人化してこれに加わっています。年間入園者(管理・観察棟入場者)は約10万人です。


 南港野鳥園の外部からの評価は高く、シギ・チドリ類の飛来数から2001年に環境省の「日本の重要湿地500」に選定され、また、国境を越えて渡るシギ・チドリ類の一定以上の個体数が飛来する地域保全に国際的に協力する「アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワーク」(現在は「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップに基づく重要生息地ネットワーク」に改称)に大阪市は2 0 03年に登録しています。
2004年には国際的な鳥類保護組織であるBirdLife Internationalが主催するIBA (Important BirdArea)に(公益財団法人)日本野鳥の会が選定しています。また2011年には国際環境NGOであるConservationInternational (本部アメリカ)の生物多様性重要地域にも選出されました。
 
 野鳥園には観察指導員(レンジャー)が配置され、野鳥観察だけでなく、文化・社会・教育施設として活用されており、「大阪市環境表彰」を2004年に受賞しました。国土交通省からは「手づくり郷土(ふるさと)賞」を2006年に地域活動部門で、また2011年には同大賞部門を受賞しています。また野鳥園は大阪市の小・中学校の副読本「おおさか環境科」に野鳥観察・環境を守るための活動・生物多様性を学ぶための場として紹介されており、地元の小学校の授業に活用されています。また地元の咲洲高校の野鳥園を活用した授業の取り組みは2011年に(財)日本鳥類保護連盟の「褒状」を受賞しています。

 シギ・チドリ類の多くは北極圏から赤道を越えて東南アジア、さらにはオーストラリア・ニュージーランドまで超長距離を渡ります。大阪湾岸にはこれらの鳥の中継地になる干潟がほとんど失われており、狭いながら野鳥園の存在がきわめて大きいのです。そして、南港野鳥園は大阪市はもとより、世界にとっても重要な渡り鳥の保護地区として認識されているのです。

大阪南港野鳥園「存廃」をめぐる最近の動き

文 金谷 薫(副会長・大阪南港野鳥園を存続させる会)

  5月11日:大阪市が「市政改革プラン(素案)」を策定。パブリックコメントを募集、保全協会も提出。
  7月30日:大阪市が「市政改革プラン」を策定・公開。
  9月7日:日本野鳥の会大阪支部が大阪市へ意見書を提出。
  9月20日:「大阪南港野鳥園を存続させる会」が発足。

 9月20日に、鳥類の関係者と保全協会有志が集まり、現在進行している大阪南港野鳥園(以後、野鳥園)の存廃問題について話し合い、その日に「大阪南港野鳥園を存続させる会」が発足しました。保全協会の高田先生が代表者に就任しました。

 5月に大阪市の「市政改革プラン(素案)」についてパブリックコメント募集に際し、野鳥園を存続させようという多くの意見が市民から寄せられました。市民の関心は高いようです。
 7月30日に大阪市は、「市政改革プラン」を策定し、大阪市の施策や施設について一律に見直すことを発表しました。野鳥園も見直しの対象となり、方向性は「存廃を含めて検討」、中身的には「現有の干潟や湿地のあり方等を総合的に勘案して、収支均衡方策の検討と併せて、施設(展望塔等)の存廃も検討」となっています。見直しの理由は「公共が関与する必要性の低い事業である。料金非設定で、税等を投入して継続する合理性が低い。」としています。
 野鳥園は、単に大阪市の施設と云うだけでなく、シギ・チドリ類の渡りの中継地として重要な場所となっています。(詳しくは、高田先生の「南港野鳥園の存在」のページを参照ください)メルボルンにある環境保護団体からも重要性を指摘するレターが届けられる予定です。野鳥園存廃問題は国際的な視野をもった課題です。また、年間10万人の来場者を数え、環境教育の場としても重要な意味を持っています。

 現在、野鳥園は、指定管理者(株式会社ハウスビルシステムとNPO法人南港ウェットランドグル―プの連合体)によって運営されています。スタッフ4名が常駐し、観察指導から環境整備までカバーしています。展望塔やスタッフの常駐などの効果によってこの人工干潟が維持管理されているという点を見ずに、単に経費節減のみで一律に見直そうとする大阪市の市政改革のあり方が問われるところです。指定管理者の契約が平成25年度まであり、まだ検討する時間はあるようです。
 出来上がったばかりのネットワーク組織の「大阪南港野鳥園を存続させる会」ですが、大阪市への要望書を提出することから作業を始めました。今後、皆様のご理解の下で野鳥園を存続させるための活動を展開していく所存です。
ご協力をお願いします。

ネイチャーおおさか 公益社団法人 大阪自然環境保全協会

ネイチャーおおさかは、身近な自然を愛し、これを守り育てたいと願う市民が運営している公益社団法人の自然保護団体です。お電話でのお問い合わせはこちら 06-6242-8720

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