都市と自然誌抜粋(トピック)No_448_201307_3

報告 第31回里山一斉調査報告

文 常俊 容子(NOB 里山委員会 野生シカ調査会)

 春恒例の保全協会主催行事「里山一斉調査~観察しながらウォーキング」は今年第31回、初日の4月7日は春の嵐で1コース中止となりましたが、概ね天候に恵まれ7日2コース、14日8コース、20日1コース、21日1コースの計12コース(昨年度は14コース)で実施(コース名は確認表参照)、延べ約160名(うち中学生以下15名)が参加しました。

 今年度は例年になく開催が3週にわたりましたが、花暦が遅かった昨年一昨年より季節の歩みは早く、コバノミツバツツジがちょうど見頃。
「散り桜の中、名残りのカスミザクラが山中きれい」「例年蕾で見るウワミズザクラの満開は初めて」など開花時期の異なるサクラの話題には事欠きませんでした。
 定点観察ならではの醍醐味で、一年振りにお馴染みの動植物を確認する一方で、初確認のご新規さんを発見したコースもあります。
 今年も人為による負の影響あり、今回荒天で開催中止の高槻・原盆地では第二名神の大規模な工事で元のコースは通行不可(写真-1)、茨木丘陵・鉢伏山では彩都周辺で山林整備が進行中、いずれも今後の変化に要注目です。

 
 四条畷・田原の里山では清滝生駒道路の4線化工事がとうとう調査コースに及び、ノウサギ始め春の草花を確認していた畦道、休耕田は残念ながら消失しました。また斜面の宅地化が進む八尾・高安山では、唯一の空き地に家が建ち、草花が無くなったとのこと。

 道路、宅地と大規模開発が続く泉南・畦の谷では、この一年でさらに植生が激変、降雨による土壌流出でウラジロなどの林床植生がすっかり消失、本コースのリピーターからは驚きと不安の声。哺乳動物のフィールドサインも減少。年々山が乾燥している‥とのことで、近年同様の報告が増えています。 

橋本・玉川峡では2009年の道路拡幅工事以降帰化植物が徐々に侵入、月一回林内管理されている箇所では林床が明るくなり、植物が増加していますが、シカサインも増加。

 シカの現況と、森林植生への影響の確認が主目的の特別コースは今回箕面市・鉢伏山へ。ネザサは、すっかり消えた山頂を中心に全域で減退、低木層以下にほぼ植生がないため、ヒトの進む道は判然とせぬ一方、シカ道はよく目立ちます。裸地化が進む中、一部斜面崩落も確認(写真-2)。シカによる採食圧の累積も高く、今後も要注目地域です。

 程度の差はあれ、北摂各地でシカによる植生への影響は顕著で年々進行、箕面・聖天山~才ケ原では林間はますます明るくなり、能勢・妙見でもめっきり他の哺乳動物のフィールドサインが少なくなったとか。

 ササ等の刈り払いで明るくなり出現した草本に喜んだ池田・五月山では公園部分でもあり、調査の翌日には盗掘されてしまったようだとのこと。一方シカ不在で春植物が豊かな枚方・穂谷では盗掘を心配しなくてはならない、という皮肉な構図です。 
 特定外来生物では、堺・鉢ヶ峯で捕獲の効果かアライグマの情報がなくなったとのこと。府下広く生息拡大し、認知度はすっかりあがったアライグマと同様に、被害が懸念されるハクビシンの情報が最近増加しています。今回確認の報告はなかったのですが、フィールドサインでの同定は難しく、外来生物の一員として要注意です。

 今回初の和泉・信太山は、当地の保全に取り組む「NPO法人信太の森FANクラブ」との共催で実施しました。本誌でも何度かその湿地特有の府下で希少な植物相が紹介されており、他では見られない種名が並びます。ゴミの多さ、荒れた里山の整備に今後の課題ありとの報告。 かたい行事名ですが、まずは身近な自然を知って考える第一歩に、というのが主たる開催の趣旨です。 今回も参加の方々からは「意外と近くに自然がいっぱい」「いつもの場所で今まで気づかなかった」との声がありました。

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