都市と自然誌抜粋(トピック)No_454_201401_1

Tomorrow 暮らしの中の生物多様性

文・写真 夏原 由博 (会長・名古屋大学教授)

   今年は生物多様性条約愛知目標の中間評価の年です。保全協会でも、生物多様性推進委員会を設け、企業や自治体との協働を始めています。里山の生物多様性を見直すために、新たに里山指標生物を選定し、その調査を開始しました。さらに、減少が著しい草地の保全への取り組みも始めました。「都市と自然」では昨年7月から、Tomorrowで生物多様性をテーマとした連載を行っています。

  ところで、愛知目標をはじめとした生物多様性の取り組みは、従来の自然保護とは異なるのでしょうか。私は、自然を楽しむことと、地球で起きていることを知って地域を変えていくというふたつの活動を一緒に行うことが求められていると考えています。自然を観察したり、自然を楽しむことは大切です。そうした経験が生命観や世界観に影響します。加えて、食べられる野草や切っても萌芽する木などの知識、野菜や稲を育てる体験は、日本人として生きていく上でのリテラシーだと言えます。ここで日本人と書いたのは、地球上の別の地域では、稲でなく羊を飼う暮らしなどがあるからです。

  自然を楽しむ一方で、知識として学ばなくてはならないことがあります。私たちの生活が、地球全体の生物多様性(生態系)を脅かし、それが人類自身に暗い影を投げかけていることです。食肉を生産するための飼料の一部は、ブラジルの自然を破壊したりアメリカの化石水を消費して生産されています。こうした自然の消耗は、製品の価格に含まれていません。愛知目標では、生物多様性への影響を国民経済指標に組み入れることが提案されています。消費者は、肥料から流通まで考えて、生物多様性に配慮している食品を選ぶ責任があります。産地を訪れて、農家と交流できるような機会がそうした取り組みの助けとなるでしょう。

  人々が生態系から得ている恵みを生態系サービス、そして生態系サービスの元になる自然を自然資本と呼んでいます。昨年、里山資本主義という本がベストセラーだったそうです。お金の循環がすべてを決するというマネー資本主義だけでなく、地域の自然と人の関係に依存した里山資本主義を残しておくことが、人々の幸せやいざというときの安心安全の保障になると提案しています。自動車や情報関連産業は国際競争を勝ち抜く重要な産業ですが、社会の持続性を保障するのは、地域の風土に応じて、ずっと住み続けられるように自然や里山を守ることです。

ネイチャーおおさか 公益社団法人 大阪自然環境保全協会

ネイチャーおおさかは、身近な自然を愛し、これを守り育てたいと願う市民が運営している公益社団法人の自然保護団体です。お電話でのお問い合わせはこちら 06-6242-8720

  • お問い合わせ


  • Facebookページ
  • 野山のたより
  • 都市と自然