朝日新聞投稿(夏原原文)

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朝日新聞に夏原会長の投稿が掲載されました

2019年12月19日(全国版・デジタルには2019年12月17日)、朝日新聞「声」欄に夏原会長の投稿が掲載されました。
この投稿の原文は1600字の論壇への投稿で、それを新聞社が声欄に掲載するために本人了承の上、400文字にしたため、肩書もなく、投稿の本意の伝わりにくいものとなっていました。(ここに新聞の紙面は掲載できないので、朝日新聞社のサイトでご覧ください。)
そのため、当協会では本人の了解を得て、ここに投稿原文を全文で掲載いたします。ぜひとも、原文の方をお読みいただきたく思います。

大阪・関西万博をいのち輝く場に―シギ・チドリ等の飛来地の保全を求めます

    夏原 由博(公益社団法人 大阪自然環境保全協会代表/名古屋大学大学院環境学研究科教授)

夢洲とはどんな場所か

 大阪・関西万博の会場となる夢洲は1979年から建設残土や浚渫土、廃棄物による埋立が開始されました。その過程で、塩生湿地や裸地、草地ができ、多数の野鳥が飛来し、ツツイトモなど絶滅のおそれのある水草が生育するようになりました。なかでも保護のために国際条約も結ばれているシギ・チドリ類については、特筆に値します。環境省によるモニタリング1000シギ・チドリ調査によると、夢洲にはこれまでに55種のシギ・チドリが飛来し、最大飛来数は2252羽に上ります。これは大阪湾の干潟では最多であり、後述するラムサール登録湿地である葛西海浜公園の2倍、谷津干潟とほぼ同じ個体数です。また、2011年には国際希少野生動植物種であるコアジサシの巣が1500個記録され、減少したものの現在も飛来しています。そのため、2014年に公表された大阪府レッドリストで、生物多様性ホットスポットのAランクとして選定されました。
 埋立が完了すれば湿地は失われるのですが、こうした事実は、大阪湾奥の自然が持つ高いポテンシャルを示しています。大阪市港湾局は、1998年に北港南海浜整備事業計画を発表し、干潟等の自然を再生するとしていました。しかし、埋立の遅延によって干潟造成は着手されていません。干潟造成予定地はごみ焼却残さ等の埋立を継続中で、万博開催中は埋立を休止し、万博終了後に埋立が再開されるとされています。そのため、万博開催前後にかけてシギ・チドリが生息できる場所が失われます。

環境アセスなしの先行埋立は即時中止を

 2025年の万博開催のために、大阪市は、購入した土砂による土地造成を開始しました。これは夢洲や大阪湾岸域の自然に重大な負の影響をおよぼすものです。方法書での開催地選定理由として、「埋立地を活用することによる自然への負荷が少ない」とされ、現存する豊かな自然を全く考慮していません。本来ならば、建設残土等を時間をかけて埋め立てる計画であったのが、2025年の開催までに土地造成を終えるために、土砂を購入して埋め立てています。これにより市民の税金が使われているだけでなく、水鳥の生息場所の消失を加速させ、土砂の採取のためどこかの山をつぶすという自然破壊行為です。土砂投入は万博事業の一環ですが、環境影響評価の手続き開始前になされた脱法行為です。環境影響評価手続きが終了するまで、購入土砂の投入を中止すべきです。

ラムサール条約登録をめざそう

 ラムサール条約は国際的に重要な湿地を保全することを目的とした国際条約で、日本では50か所が登録されています。しかし、自然、漁業、文化ともに重要な大阪湾から瀬戸内海東部には登録湿地はありません。大阪湾奥には、大阪南港野鳥園や甲子園浜などのシギ・チドリの飛来地があります。それらに加えて夢洲にシギ・チドリや海浜性生物の生息場所を創生し、ラムサール条約への登録を目指したいものです。
大阪関西万博は、テーマとして「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げ、目的のひとつを「持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献」としています。国際博覧会協会と大阪市は、環境影響評価に市民の声や市民による調査結果を十分反映させるとともに、後世の人々にとって、大阪・関西万博はいのち輝く未来を指し示すレガシーとなるように、自然環境への配慮を求めます。

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ネイチャーおおさか 公益社団法人 大阪自然環境保全協会

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